公開: 2024年3月31日
更新: 2024年8月4日
創価大学の三津村正和氏は、「いじめ」問題の解明が難しくなる要因に、問題が発生していても、第三者の目には見えない「不可視化」作用があり、隠されてしまう傾向があることを指摘しています。
それは、「いじめの加害者」だけでなく、「被害者」や本来、中立的な立場であるべき「教員」も関わり、集団内での「いじめ」を隠そうとする心理が働くからだと論じています。ある中学校で報告された「お葬式ごっこ」は、教員も参画していたそうですが、「いじめ」とは認識されず、「悪ふざけ」とされていました。
その事件の被害者の少年も、あたかもその行為が悪ふざけであったかのように振る舞い、にこにこと笑っていたとの報告があったそうです。しかし、被害少年の自殺後に発見された遺書には、{いじめ」の加害者が4名であったことは記されていましたが、氏名は書かれていませんでした。
三津村氏は、被害者の少年も加害者の少年たちと同じ集団に属していたことを否定できなかったことの現れだと指摘しています。被害者の少年もその集団への帰属意識から離れられなかったのだと言うことです。
このような小さな規模の集団における「いじめ」を、集団外部の人が認識することは容易でなく、この場合、教員の目から見ると、「悪ふざけ」に見える可能性があるとしています。この傾向が、教員が加害者(達)を擁護する立場に立つ傾向を生み出すのです。
三津村正和、学校における「いじめ」問題の現状と課題、創価大学教育学論集第67号(2016)